AntRoom 島田拓氏インタビュー 後半


前半 後半 

 

アリ語で「ごはんちょうだい」

ところどころで、働きアリ同士が口をつけてるんですけど、それは食べた餌を吐き戻して仲間に分け与えてるんです。
アリは胃袋以外に、素嚢(そのう)という別の袋を持ってて、一時的に素嚢(そのう)に溜め込んだえさをあとから吐き戻すことができるんですよ。

もらう側のアリは、相手の頭を触覚でたたくんですけど、お腹がすいてるほど激しく叩くんですよ。「えさをちょうだい!」と。

ーーあ、ものすごく叩いてますね。

これはお腹すいてるアリですね。

ーーもらってるのにちょっとずうずうしい・・・


さらに見るポイントがお腹の大きさで、
えさをあげてるアリのほうがやっぱりお腹にたくわえてるので、お尻が大きいですね。

アリは卵の段階では、働きアリになるか兵隊アリになるか女王アリになるか決まってません。
働きアリが幼虫にあげる餌の量によって変わるんですけど、このちょっと体の大きいのが兵隊アリです。

兵隊アリは体が大きくて力があるので、大きいえさを運んだり、解体したり、などの力仕事を担当します。

ーーもともと、どの子でもそういう素質はあるんですか?

そうです。卵の段階では、女王にもなることもできるんですけど、
それは働きアリが幼虫にあげるえさの量によって決まっちゃうんですよ。
とにかく、巣が作られ始めたばかりでアリの数が少ないときは、増やすことが先決なので体の小さな働きアリを大量に作ります。

働きアリの数が100匹から200匹になってくると、多少巣が安全になってくるので、集まるえさも増えてきます。
すると、だいたい全体の1割くらいの幼虫にちょっと多くえさをあげるんですよ。
それが兵隊アリになります

さらに5、6年成長して数が2000匹くらいになり、安泰になると、はじめて女王アリをつくりはじめます。
女王アリには、最初は羽が生えてるんですよ。
一つの巣で何十匹も女王アリが生まれて、ある時期に一斉に巣から飛び立ちます。

飛び立って、別の巣のオスと交尾をすると、自分で羽をとって、自分で穴を掘って、そこから1匹で巣を作り始めるんですよ。
で、そこからまた新しい巣が始まります。
最初は女王アリは1匹で子育てをするんですよ。

 

仲間は全員同じ女王のにおい

ーー個体同士で仲の良し悪しはあるんですか?

働きアリはみんな仲がいいですね。
ただ、同じ種類であっても、別の巣のアリとは、もう出会った瞬間にケンカします。
無理矢理一緒にしておくと殺し合いになってしまいますね。

女王アリは個々ににおいが違うんですよ。
生まれた瞬間に嗅いだ女王のにおいを自分の仲間たちって思うんですよね。
働きアリは定期的に女王アリに触れることで、女王アリのにおいを自分の体につけています
なので、ここにいる仲間たちは全員同じ女王のにおいが体についています。

別の巣の働きアリと出会うと、違う女王のにおいがついてるので殺し合いになってしまうんですね。
例えば、アリの中には別の巣のアリの巣から、幼虫とか繭を持って来て、育てる種類もあるんですが、
そこで育つと、生まれた瞬間このにおいを覚えるので、仲間だと思って普通に生活します。

ーー働きアリと兵隊アリの仲はいかがでしょう?

仲いいですよ。

ーー大きいなあって思ってるのでしょうか

島田:多分そこまで気付いてないと思いますね。アリはほとんど目が見えないんです。
触覚で触れたときに、においとかで仲間を識別してるので、大きさとかほとんどわかってなくて。

パタンって仰向けになっちゃうアリもいます

ーーあ、えさ食べ始めました。

この時に素嚢(そのう)に餌をたくさんためこんで、
巣に戻って何をするかというと、できるだけたくさんの働きアリに、少しずつえさを分け与えるんです。
そうすると、えさをもらった働きアリは、「あ、こんなおいしい餌を見つけたのか」ということを知るんですね。
それで、このアリが巣に戻る間におしりから“道しるべフェロモン”というにおいを出して帰るんですよ。

ーー道しるべフェロモン・・・

はい。そして巣に帰って仲間に知らせると、その仲間はそのフェロモンをたどってえさ場まで行きます。
それが何往復もつながると、よく公園なんかで見るアリの行列ができますね。

巣に戻る働きアリは、おしりを地面に引きずりながら帰るんですけど、それでにおいを地面につけてるんです。

アリはすごくキレイ好きで、これも今自分の体を掃除してるんですよ。
前足で全身をこすって最後汚れを口でなめるんですけど、猫とか犬とかと同じような感じで自分の体をきれーいにします。
仲間同士ですることもあって、仲間同士で体をなめて掃除することもありますね。

そうするとなめられてるアリは、すごい気持ちよさそうにして
パタンって仰向けになっちゃうアリもいるんです。

本当にしぐさが猫とか犬みたいな、動物っぽいしぐさをしますね。

 

ゴミはゴミ部屋へ

今年生まれたばっかりの若い女王アリは、たくさんいるんですけど・・・

(がさごそ がさごそ。大きなケースを見せてくれる。中には小さなプラスチックケースが並ぶ)

だいたい400家族くらいいます。
働きアリの大きさも小さいんですよね。最初は。
はじめは女王アリ1匹が体内に蓄えた栄養だけで幼虫を一生懸命育てます。
なので、幼虫が栄養不足になるので小さいんですよね。数が増えてくると、集まるえさも増えてくるので、
兵隊アリが生まれたり、働きアリ自体も大きくなります。

ーー平面暮らしをしてても、部屋を分けるんですね。

繭と幼虫で置き場がちょっと分かれるんですけど、
成長段階によって、置き場所を変えますね〜。
ーーマメですね 笑

下にティッシュペーパーを濡らしたのを敷いてるんですけど、
アリたちが多少かじって、ケバだったティッシュも、ゴミの山に集めていますね。
女王アリのいる場所には、絶対ゴミを置かないで、必ず隅っこに追いやります。

地中っていう限られた場所で住んでいるので、ゴミを散らかしてしまうと、カビやダニがわいたりして、巣が汚れてるんですよ。
野生のアリもゴミ部屋にゴミがたまると、地上に捨てにいきますね。

アリがこういう掃除をするっていうのは意外と知られてないですね。
あとは死んでしまったアリなんかも、ゴミ捨て場や地上に運ばれます。
だいたい働きアリの寿命が1年くらいなので、1年後には全部入れ替わります。

ーー死んだって理解するんですね。

あっ、今死んだアリ運んできてますね。

ーーどういう気持ちで運んでくるんですかね?

これはもう、単なるゴミとして扱っていると思います。
死んで日数が経つと、生きてるときのにおいがなくなってきてしまうんですね。そのにおいで死んでると判断してます。

外国のアリもいます。
日本のアリとは全然違いますね。特に熱帯に行くと、形の変わった種類がすごく多くて、キバの長いアリとか、日本にはいないような形のがいっぱいいます。
性格も、アリのグループによって変わりますね。
「属」っていうのがいくつもあって、「ヤマアリ属は比較的おとなしい」とか、「ハリアリ属は毒針をもってて狩りをする」とか。

ハリアリ属なんかも日本に普通に生息してて、そういうのは毒針があって、獲物を捕まえる、狩りをするアリですね。

掃除がすごく苦手で、散らかしてしまいます・・・

これはクワガタアリっていうアリなんですけど・・・
キバが長いんですよ。これはマレーシアとかに住んでるアリです。
毒針も持ってます。かなり大きな獲物でも、1匹で捕まえることができます。

ーーあっ、ケンカしてますね、平気なんですか?

アリは、普通は仲がいいんですけど。
この種類だけは、仲間同士のなかに順位があって、ケンカをして優劣を決める儀式があるんです。
ハリアリ類はアリの中でも原始的なグループなんですよ。
ハチから進化したのがアリなんですけど、
原始的なアリはハチに近いので、未だに毒針があります。
暮らしも、クロオオアリのような高等なアリに比べて原始的なので、仲間同士の争いがあったりします。
ハリアリは、原始的なアリの特徴として女王アリと働きアリの体の差があんまりないんですよ。働きアリも卵を生むことができますね。

ーーハリアリは部屋の掃除はしないんですか?

この原始的なアリは掃除がすごく苦手で・・
一応ですね、この角に今トイレ作ってるんですけど・・・クロオオアリのように隅に寄せることはしなくて、そこらへんに散らかしてます。
あ、ケンカしてますね。

ーー殺しちゃうことはないんですか?

ないですね。そこまでは。多少加減はしてるみたいです。

 

(クワガタアリまだまだ観察中)
見てると、ちょっと普通のアリよりも、あまり頭は良くなさそうな感じはしちゃいますね。笑

アリは日本だけで280種類以上いるんですけど、世界には1万種以上いて、種類ごとによって、性格や習性とかが全く変わってきます。
熱帯とか、南米とか行くとすごいでっかい強そうなアリがいます。
軍隊アリという、もう何十万匹、何百万匹っていう行列をつくって森じゅうの虫や生き物を食べちゃうっていうアリがいるんです。
そのアリは、森の生き物を食べ尽くしては巣を引っ越す生活を永遠に繰り返してます。
今年南米に見に行ったんですけど、ものすごい行列で、森じゅうを走り回って、もうサソリとかタランチュラとか、何でも食べてましたね

 

役割分担しています

だいたい、全体の1割から2割が、地上に出てえさを集めるっていわれてます。
外ですごいたくさんのアリが地面を歩いてるじゃないですか。
あれは全体の2割で、残りの8割近くは巣の中に暮らしてます。
残りは巣の中にいて、えさ集めのアリが何往復もして、えさを運んできますね。

外に出てくるアリは、年上のアリなんです。
若いうちは、巣の中で安全な仕事をして、年をとってくると、地上に出始めるんです。
事故とかで死んでしまうと、今度は次に年輩のアリが、出てくるようになりますね。

 

狡賢い蝶の幼虫

 

もう一個面白いのがあって、クロオオアリの巣に同居している蝶々の幼虫がいるんですけれども。

ーー蝶々?

クロシジミっていうシジミ蝶の幼虫なんです。

あっ、今アリからごはんもらってます。
「ごはんちょうだい」って、揺れながら。
右にいる大きいアリは、幼虫のお尻から蜜をもらっています。
クロシジミはアリからエサをもらうかわりに、お尻から蜜を出します。

このクロシジミは全国的にどんどん数が減っていて、絶滅しちゃった場所も多いんですよ。
昔は東京にもいたんですけど、もういないですね。なんとか保護したいので飼育を続けて、集めてきた場所でまた放したいですね。

これも面白いんですよ。一生懸命アリが世話をして、口移しでえさをあげている。
アリは色んな生き物と共生関係を持っているので、他の生き物との関わりもすごく面白いですね。

 

ーークロシジミの幼虫は、アリにとってのペットのような感覚なんですかね?

「蜜を出すから育てている」という考え方があったんですけど、最近の研究では、
蝶々の幼虫がアリと同じ匂いを体から出して、仲間になりすましている」と言われています。

ーー:なりすまし?

アリは蝶のことを自分の仲間だと思っているみたいです。

ーー可哀想ですね。

でもこのクロシジミは、アリから口移しでえさをもらうだけなので、アリへの害は無いんですよ。
でも、他の蝶々の中では、アリの幼虫を食べてしまう種類もあって、アリの巣に進入して、どんどん幼虫を食べていくんです。

これも今、口移ししてますね。
全く違う生き物が同じ巣に暮らしていて、エサをあげたりもらったりというやりとりがある。

今までいろんな虫を飼ってきたからこそ思うんですけど、もう本当にすごいなって思うんですよね
なんとかクロシジミを増やしていきたいんですよ。

 

 

 

 

島田:クロシジミの幼虫は卵から孵化すると、アブラムシの周りに集まるんですよね。
アブラムシがお尻から蜜を出すので、それをクロシジミの幼虫がなめるんですよ。
幼虫は一週間アブラムシの蜜を食べて成長します。アリもアブラムシの蜜を吸いにくるので、
クロシジミの幼虫をみつけると、巣に持って帰って中に運び込むんですよ。で、地中にある巣の中で育てると。

かわいいんです、クロシジミが。

ーークロシジミに対して「かわいい」なんですか?それは、赤ちゃんを見て「かわいい」って思う感覚と同じですか?

そうです。

ーームカデも特にお好きとのことですが、まさかムカデも「かわいい」ですか?格好いいではなく。

ムカデを好きな人は「かっこいい」って思う人が多いと思うんですけど、僕は「かわいい」ですね。

ーーそれは意外ですね。コウモリもですか?アリも「かわいい」ですか?

コウモリもアリも「かわいい」ですね。

ーー奥さんも「かわいい」なんですか?

えー、そうですね(照)
それと、子どもは特にかわいいです。

ーーアリは「形が美しい」とかではなく、昔からそういう感覚なんですか?

そうですね。

 

ーー世界中のアリを集めて重さを量ったら、世界中の人間より重いって聞いたんですが。

一応アリの世界では有名な話で、よく言われてますね。

ーー自分がアリになりたいとは思わないんですか?

アリになりたいと思ったことはないですね。

ーー嫌いな虫はいないんですか?

毛虫がだめなんですよ。
ムカデもサソリもなんでも好きなんですけど、毛虫だけが苦手で。
自分でもわからないんですけど。怖いし、気持ち悪い。
見た目がだめですね森に入るときには警戒してしまいます

ーーそれを乗り越えてアリを採りに行くんですね。

はい。前回も森から出たら、右手にでっかい毛虫がくっついていて、数時間はショックで森に入れませんでした

ーーアリに刺されることはないですか?

よく刺されます。痛いですね。南米で刺された巨大なアリは痛かったですね。
巨大だとアゴが大きいのと、毒も強いんですよね。スズメバチと同じくらいの毒があるんですよ。

ーー死んじゃうじゃないですか。

命の危険を感じたことはないですが、ハチアレルギーの人は危ないって聞きますね。アレルギーも、突然出る場合もあるんですが。

ーーもし、半年後死んじゃうって分かってたら、何をしますか?

もう一回南米に行きたいですね。アリ見たいです
南米は楽しかったですね。見たこと無い種類ばっかりいて。
アリは、地球上に色んな種類がいて、繁栄しています

 

カメラの腕にも脱帽です

ーーこれからお仕事をどうしていきたいですか?

将来は、店舗を持ちたいですね。
現在は通販専門店なんですけど、お客さんにも伝わらないことがあるので、実際にアリを見てもらえたらいいなと思いますね。
あとは、写真を撮るのが大好きなので、写真でも生活できるようにしていきたいですね。

 

 

ーー小さいアリをどのように撮っているんでしょう?

大体、マクロレンズを使っています。
これは一ミリくらいの物も撮れますね。マクロ用のストロボが2個もレンズの先端に付いていて、光が届きやすくなっています。

 

 

ーー写真は生き物をきっかけにはまったんですか?

そうですね。
アリの魅力を伝えることが、アリの販売をしている楽しみの一つなんです。
通販だと、写真で伝えるしかないんですよね。そのためには、アリの生活を綺麗に映したいなというのがあって。

飼育しているお客さんから、「観察が楽しいです」とか「アリを飼ってよかったです」と言われるのがやっぱり嬉しいですね。
アリの魅力を伝えたい、というのが一番先にありますね。
アリの魅力をみんなに知ってもらって、その喜びを自宅でも体験してもらいたいって。

生き物なので、どうしても死んじゃうこともあるんですよ。
病気とか寄生虫とか、色々な原因があるんですけど。
たまに数ヶ月して、お客さんから「死んじゃいました」って連絡がくると、すごく悲しくなりますね。

でも、そこで諦めないでもらいたいですね。
同じ種類のアリでも、突然死んじゃう女王アリもいれば、5年10年生きてくれる女王アリもいるので。
なので、最初に飼っているアリが死んじゃった、っていうのを聞くと、特に残念な気持ちになりますね。
そこでまた次のアリを飼ってもらって、喜びを見つけてもらえるといいんですけど。

とにかくアリを飼育して、観察していて楽しいっていうのを知ってもらいたいですね。

 

Ant Roomのホームページに載っている写真は、島田さんが撮ったものだ。
初めて見たとき、どこか専門のところから写真を借りて載せてるのかな?と思っていた。
プロのカメラマンは、なにをもってプロと呼ばれるが知らないが
島田さんはプロだとしか思えない。
AntRoomのホームページの「ありんこ日記」からたくさん見られます。

 

 島田さんにお会いして

本当はこの日、島田さんの仕事に対する考えや、半生など、島田さんのことを中心に取材するつもりだった。
けれど取材開始から40分、なぜか気がつけばずっとアリの話を聞いていた。
全体的に見てもアリ時間の方が圧倒的に多かった。
というか、島田さん自身の話を聞いてもいつの間にかアリや他の生き物の話になっていた気がする。
それほど生き物と一緒に歩んできた生活だったのだ。
島田さんは、生き物のどこが好きか理由はわからないそうだ。
わからないけど、好き。それは、本物で最強の好きの気持ちだと思う。

しかし、アリ、おもしろかったです。
そして「アリの素晴らしさを知ってもらいたい」という言葉は本当だった。
仕事のきっかけも、よろこびも、仕事の仕方も、すべてその言葉に集約されているのがわかった。ブレていない。
よく、好きな事を仕事にするのは幸せか否かという話を聞く。
今までいろんな意見を聞いたけれど、島田さんを見てると
そりゃ〜好きが仕事になるのが一番だと、素直に思えた。
話を聞いててもそう感じたし、なんといってもイキイキとしてたから。

この日、島田さんは少々声がかれていたのだが、きっと前日に
アリについて声がかれるまでしゃべってたんだな・・・と推測している。

ちなみに私はこの日以来、「今歩いてるこの下にも生き物が・・・」と思うようになり、
なんだか不思議な気持ちだ。

AntRoomのホームページを見る

 

取材・写真 ドクガクテツガク編集部 高橋ミホ(文)、かな子(編集)

 

 前半 後半


One Response

  1. Takaaki Kawagoe 2014年3月6日 at 21:55 · Reply

    自分も小さい頃から蟻が好きで、最近飼育したい欲が強くなってきてAntRoomを知りました。

    素晴らしい記事でした。
    AntRoomについての情報が得られたし、なにより普通に話が面白かった。

    今回AntRoomきっかけでこのサイトを知りましたが、とても興味深いです。
    これからの更新も楽しみにしています。

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