猛禽屋 ビッグ藤田 「なるようにしかならねえ」って思うやつは、強くなるんだよ。

猛禽屋 ビッグ藤田 「なるようにしかならねえ」って思うやつは、強くなるんだよ。


猛禽屋でフクロウや鷹などの猛禽類を販売する傍ら、
鷹匠として調教にたずさわってきた「ビッグ藤田」こと藤田征宏氏。

大学時代はレスリングのコーチとして数々のチャンピオンを輩出し、
現在は「猛禽屋レスリングクラブ」で、小中学生の指導にもあたっている。

藤田征宏氏の猛禽屋をたずね、お話を伺った。

「猛禽屋さんがあるんですって。」

鷹とラジコンのヘリコプターを競争させ、どちらが速いか
対決させたテレビ番組を同編集部の高橋さんが観たらしい。

お店は茨城県の牛久にあるそうだ。
茨城にどんな猛禽の園が広がっているのだろう?
胸を高鳴らせて電車に飛び乗った。

最寄り駅まで、ご親切にも車で迎えに来て下さるとのこと。
どの車かとキョロキョロさせていた矢先、眩しい車が目に飛び込んできた。

2013鷹匠見世物小屋 029

こんな驚きは軽いジャブだった。
らんらんと目を光らせながらハンドルを切る藤田さんの豪快さに圧倒される。

緑をかきわけ、山道を走ると、「猛禽屋」の看板が現れた。

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熱帯のような緑が生い茂っている、深い山だ。

2013年7月 022
我々は、藤田さんのようなストロングな方には会ったことがない。
会いたくて来てみたはいいものの、
どう話をしたらいいのかと戸惑っていた。

そんな我々の緊張をほぐそうと、
藤田さんは自動販売機の飲み物をごちそうして下さった。

アイスココアを頼むと
「振るといいよ、下に粉たまってっから」
と教えてくれた。
豪快だが、実にまめな人なのだ。
藤田さんもちょっと緊張している様子である。

―――爽やかで、気持ちの良いところですね。

「いい風吹いてるよ、今日。最高だぜ!
ここにくるとパワーを貰えるんだよ。
食物連鎖の頂点に立つ猛禽類がこんなにいて、パワーを出してるんだよ。
そこに毎日いる俺なんか、パワーが余っててしょうがない。」

―――猛禽屋さんって、どんな仕事をしてるんですか?

「お客さんに猛禽類を小売りする。大きく言えばペットショップだね。

今流行ってる「フクロウの店」ってあるでしょ?フクロウカフェとか。
カフェにフクロウがいる店なんだけど、そういう店にフクロウを卸したりもしてる。

あとは鷹を飛ばして、工場の中の鳩を駆除したりとか、
撮影用に貸し出したりとか。キヤノンの広告のワシミミズクとか、
ソフトバンクのCMで家を運んでるのもうちの鳥
だ。」

―――すごーい!

2013年7月 057

―――直接お店にお客さんが来られるんですね。

「11月15日から、2月の15日までが鷹の修行期間なの。

お客さんは土日とかにマイバードを店に持ってきて、
俺が一緒に鷹狩する。鷹を飛ばして、餌を取らせて調教
するの。
無料でね。

ここらへん俺の縄張りだから、あちこちに小便掛けて歩いてる。
ガキの頃から遊んでるわけだからさ、どこにどんな鳥がいるかみんな知ってる。
定年退職して猛禽ライフを楽しむ人も結構いるんだよね。
ハングライダーで空飛ぶの好きな人が、鳥と一緒に飛びたいってことで、猛禽を始めたら、
はまっちゃって。」

 

2013年7月 046

広げると身体の倍以上になる羽の大きさや、
とがったクチバシと鋭い爪に猛禽の野生を感じる。

「飛ばしてみるか。」

藤田さんが鷹を飛ばす。
鷹につけている紐をはずして餌を投げると、鷹は大きく羽を広げて急上昇。
点のように見えるほど高く飛び上がった。
目で追うのが難しいほど素速く飛行し、獲物を見つけたら垂直に急降下。

みるみるうちに獲物をくわえて飼い主の腕に着地した。

「調教に大事なのは「アメ」と「ムチ」。こいつらの「アメ」は、
いいことしたら、すぐ餌。獲物とってきたらすぐマウスとか餌を上げる。
そうすると、飼い主から離れなくなる。」

――――上空からでも餌をもらえるのが分かるんですね。

「分かる。1キロ先のアリンコの足が分かるんだよ。猛禽類全部。

「ムチ」は餌あげないこと。調教って絶食させるために、
普通に一週間くらい餌あげないから。
鷹の性格は全部違ってちゃんと言うこと
聞くやつもいるし、聞かないやつもいる。

それ相応に応じて、調教しないとダメ。
5年、10年かけて年々慣れる。」

2013年7月 071-5

ハイブリッドファルコン。神経質なので、興奮しないように目隠しがされている。

「あそこの鳥は、俺が作ったハイブリッドファルコン

チョウゲンボウとハヤブサのハーフ。
世界的に、ハイブリッドファルコンっていうのが人気で。
シロハヤブサは体が大きくて、海面場1キロ先の獲物を
とってくるくらいの体力がある。
ハヤブサっていうのは、上空高くあがって、
上空で待機してて、獲物がいたら蹴って殺す
ハヤブサとシロハヤブサのハーフが、ハイブリッドファルコン。

繁殖シーズンは餌やりとか卵の管理で半端じゃなく忙しい。
生まれたてのヒナの口に、直接餌を流し込んでやるからさ、
老眼進んじゃって。老眼鏡付けてやってるよ。

今しかないから、毎年同じ悩みがあるの。2013年7月 067

うちで繁殖させるだけでは足りないんだよね。需要が多いから。
でも、特に猛禽類の繁殖ってすっげー難しい
センスがいるから。

―――センス?

卵って繊細だから、色んなところに気がつく人じゃないと、無理なわけ。

俺に繁殖の指導をしてくれた人がまた素晴らしい人でね。
トキ保護センターのトキって、5年位増えてなかったでしょ。
それが突然増えたの。それは俺に繁殖を教えてくれた人が、
アドバイスをして、現代に至ってるわけ。
今じゃどこもうちにはかなわないよ。」

国の研究機関は、技術に貢献した人の名前を出さず、
研究機関の功績にしてしまうことを、藤田さんは怒っていた。

―――お仕事で海外に行かれるそうですね。

世界鷹狩協会ってのがあって、
ミーティングが毎年一回あるのね。
ミーティングでは、世界の鷹狩事情を話す。
鷹狩の途中で逃がして野生化することが問題になってるんだよね。
そういう問題を話し合う。
ユネスコの無形文化遺産に鷹狩を取り入れてもらうとか。」

ちなみに、鷹狩は2010年に世界無形文化遺産に指定され、
記念として、11月16日は「世界鷹狩の日」と定められた。

2014年の「世界鷹狩の日」には、藤田さんと各鷹狩団体が
日本の伝統文化としての鷹狩を広めるため、協猟会を実施したそうだ。

2013年7月 056

小さいけれど、近づくとピーピーと威嚇する。

「奥が深いよ。今じゃ「猛禽屋」、アジアでも知らないとこないからね。
タイからも電話掛かってきて。」

―――タイ語喋れるんですか?

「無―理ーっ。「コップンカー」しか言えねぇもん。

フクロウや爬虫類の輸入もゼロから始めた。

俺、友達に猛禽類の本を書いてる「パンク町田」って
のがいるんだけど、一緒にインドネシア行ったりしてて。

お客さんも、ただ説明されるより、
「このヘビどこ住んでるか知ってる? これ俺ら行ってきてさぁ」って言われた方が、
すごい喜ぶんだ。そういう商法だね。
親父がローソンの茨城一号店とかスーパーとかをやってた
商売人で、色々見てきてるから。

「猛禽屋」は、動物が好きだから始めた。
流行ってるからとか、金儲けで考えてるところはだめだよ。
そういうやつはだんだんせこくなるから。大体いなくなる。」

猛禽屋さんができるまで

 

2013鷹匠 (2)

「ガキの頃から動物は好きだから。
家の親父が野鳥好きで、捕まえたりしてて、俺がついて行ったりしてた。

中学校の柔道の県体でスカウトされて、土浦日本大学高等学校ね。

その後は、国士舘大学でレスリングのコーチ、研究助手。
大学1年の時は先輩たちの奴隷だから、
ずっと常に正座かあぐらして、90センチ画くらいの中に小さくなってる。
2年生になって平民になったら熱帯魚を寮の相部屋で飼って
先輩にもちろん許可取ってね。3年生になったら小遣いで蛇買った。

4年のときはすでに動物はいっぱいいたね。
家でも野鳥と犬飼ってた。

その後は学生のころから新宿2丁目でバイト
ホモじゃないよ!
ノンケだけど、「ハッスル」って店のママが体育会系大好きで。
国士舘大学のは学生は毎年何人か働いてる。

卒業したら実家のコンビニを手伝いながら、
いずれはペットショップやりたいって夢見てた。
働きながら銀行でお金借りれるの待って。

駅前にあった珍獣屋以外、全部山だったところから造ったんだ。」

2013年7月 016

奥の青い建物も猛禽の家。高台から下が見渡せるが、下まで森だったところを開拓し、一帯を猛禽屋として造り上げた。

「24歳のときに珍獣屋「ガメラ」を始めたんだ。
コモンマーモセットとか、猿とかを売ってて、
そしたら近所の小学生が店に来るようになった。
そいつらをピックアップして、レスリングに誘って、5年で連続全国チャンピオン5人作ったからね。
すげー伝説だよ。半端じゃないよ。黄金時代のやつらはみんな感謝してるから。」

―――!?、猛禽屋をやりながら、レスリングの先生をやってるんですか?

「ボランティアで小中学生に教えてる。
家の息子もやってるよ。子供4人いて、全部オス。
マイクロバスも、自分持ち。

2013年7月 001

「ガメラレスリングクラブ(現:猛禽屋レスリングクラブ)」って言うんだけど。
準備体操でバク転とかやる。ユニフォームに「ガメラ」って書いてあったら、
本人の力以上に強く見える。
戦略だね。

――ガメラレスリングクラブ!?

そう、最初は「ガメラ」っていう名前で店をやってたんだけど、
ハクトウワシの卵が盗まれてニュースになった。
そしたら、「大怪獣映画ガメラ」を作った「角川大映」から、
内容証明が届いて。弁護士3人くらい連れて店に来たの。
自分の会社の映画の名前を勝手に使うなってことで、
ガメラを使った年から現在までの売り上げを提示しろ」なんて言われて。

こっちも知り合いの弁護士呼んで。
「著作権に問題あるから、改名しろ」って言われたんで、
「ガメラ1」にしようとしたらダメだって言うんで。
「じゃあ、猛禽やるから『猛禽屋』で。」って。自然な流れだね。

2013年7月 068

これはね、一緒なんだよ。鷹の調教も何もかもと。
アメとムチが使い分けられると、全部はかどる。
選手のやる気が引き出せるじゃん。

小学生の「ムチ」は、ボッコボコにぶっとばすこと。
無駄にぶっとばすんじゃないよ。
タックルのタイミングをとれずにもにょもにょしてるときに、
ケツひっぱたきながら、「出ろ出ろ!」ってタイミングを教えてやるの。

ヘロヘロまでやらすの。限界まできたら力が抜けちゃって、
ウンコ出そうになっちゃうの。

やつらは「ここまでやってどうすんだよ」と思うじゃん。
それが大会に行くと、そこまで小学生や中学生で練習してるとこないから、
余裕で勝っちゃうんだよね。勝つと嬉しいじゃん。
さらに嬉しくさせてやるんだよ。
学校に賞状持ってってやるんだ。先生に「この間レスリングの大会で優勝したんで、
皆の前で表彰してやってください」っていう。
そうすると先生は、大抵「わかりました」って言うんだけど、
ちょっと変わった先生は、「個人のことですからできません」なんて言う。
そういうときは、先生に一発キレちゃえばいいの。
「お前ふざけんなよ! 生徒ががんばってるんだから、
それを表彰してやるのが先生だよ」とか言っちゃって。
で、全校生徒の前で表彰されてみ? もうやる気バンバン出てきちゃうから。それが、「アメ」。

あとは、あんまりにも疲れちゃって、みんなやる気がないときは、
俺が練習行って、「よし、今日遊び!」とか。それも「アメ」。
そうすると、フル全開で遊んじゃうから、やつらは。本当に面白いよ
。全国チャンピオン作ってるんだから。俺がばてちゃってる時も、
本当に強い生徒は「もっときつい練習やらせてください」って
自分から言ってくる。そうならないと、強くならないよ、選手は。

2013年7月 061

―――凄いですね。

うーん、でも、疲れたって思わないからね。
さっきも言ってたけど、クソも出るようなことやってたから、こんなの屁でもないんだよね。
わかる?それって。わかんねーだろーな。

本当にね、本当にちょっとした人しかそういうこと経験してないと思うよ。

―――わかんないですね。

いや、ウンコのじゃないよ。ウンコのじゃなくて、精神的なものさ。
追いつめられて、「これ以上走れねえのにまだ走んのかよ…、
もうやるしかねえ。なるようにしかならねえ」って思うやつは、強くなるんだよ。

最近、うつ病だかどうのこうの言ってんじゃん。

結局ね、考え方が内向だからなっちゃうの。
「なるようにしかなんねえよ」って思えばいいんだよ。
そういうやつらはね、インドネシアの奥地とかに行って、土人と生活させるのがベスト。
ヤシの葉っぱの枝に糸付けて魚釣って食うんだよ、彼らは。
でっかい針で小さい魚釣って、一日それ釣って食うことだけを考えんの。
死ぬか生きるかどっちかだよ。
だから、他のことなんて考えねえよ。考えることが多すぎるんだよ、日本は。

――――ありがとうございました。どこの馬の骨とも分からない人間に
こんなにたくさん話をきかせていただけて。

どう、参っただろう?一番取材した人の中では一番パワー持ってただろう!?

俺そういうの大っ好きだから。味方は多い方がいいんだ。
またいつ会うか分からないからな。

 

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