両親もスタントマン!22歳のスタントウーマン・沙季華 「スタントするのは、怖いです」

両親もスタントマン!22歳のスタントウーマン・沙季華 「スタントするのは、怖いです」


スタントウーマン・沙季華さん インタビュー

ある日「笑っていいとも」を見ていたら職業の月収を当てるコーナーがあった。
そこに沙季華さんが出ていた。それがなんだか、かわいかったのだ。
声や雰囲気もかわいくて、スタントマンのイメージとはほど遠い。
若いのにスタントマン歴が長く、その上、両親もスタントマンだという。おもしろい。
しかも、ちゃんと稼いでいる。若い女の子が、職業としてスタントマンをきちんと
成り立たせている。

どういう人生を歩んできて、どんな方なのか、俄然、気になってきた。
スタントマンという職業も、もちろん知ってはいたけど
じっくり考えたこともなかった。
ということで、まるっと質問をぶつけてみた。

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沙季華 プロフィール ************

スタントマン、アクション女優。1990年、
神奈川県生まれ。
オフィスワイルド(www.studio-wild.com)所属。
出演作品:プリキュアショー、大橋卓弥「はじまりの歌」PVなど多数。
休日は、お昼まで寝たり、岩盤浴や買い物、カラオケに行ったりする。

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「みんな、飛んだりとかしたいものだと思ってて」 

―――所属事務所「オフィスワイルド」の沙季華さんのプロフィールを見ると、
「アクション女優」というくくりになっているんですが、スタントマンと同じ意味ですか?

アクション女優は自分の名前がある役でアクションするものです。
人にかわって危ないことするのがスタントマン。スタントマンは自分の存在を隠しながら、危ないことを代わりにします。
アクション女優として仕事をしたのは、スキマスイッチの大橋卓弥さんがソロでやった「はじまりの歌」。そのときに顔を出したので、アクション女優として紹介しています。

——自分としてはスタントマンという感じでしょうか。

そうですね。

ーー両親がスタントマンという事ですが。

はい。私が生まれる前からやっていました。父はスタントマンで、母は顔を出して出演している作品もありました。「スタントマン兼アクション女優」っていう感じです。

――スタントマンのご両親から、この仕事に就くことを勧められたんですか?

全然言われなかったですね。お父さんからは、「無理じゃない? バク転もできるようにならないよ」って。反対はされなかったですけど。
お兄ちゃんとお姉ちゃんがいるんですけど、二人は全然別の道にいってて

ーーご両親はお家でスタントマンぽい動きを日々しているんでしょうか。

いえ、特にしてないです。

ーー確か、22歳なのに、スタント歴長いんですよね。

7,8年目です。稽古を中学3年くらいのときにやってみようかなと、練習を始めて。そこから危ないことさせられたり。させられたりとかっていうか(笑)、お仕事でスタントやらせてもらえるようになって、自然とスタントの道にきています。なんででしょうかね。親孝行の一環というか・・・。

——中3くらいから始めて、高校は行ったんですか?

高校は行きました。卒業して芸術系の大学に行って、色々勉強したんですけど、なんか自分がやりたいのと違うというか。なんだろう、勉強するよりは、撮影現場にいた方が力になるなーと。学ぶより現場で覚えた方がいいと思って、大学を中退しました。今は通信で大学行ってるんですけど。

——大学も、スタントに生かそうと思って行ったんですか?

そうですね、お芝居とかが勉強できる学校なんですけど、ミュージカルやオペラの歴史とか、私には興味がない分野だったので。そんな事してる場合じゃないって。

——大学選んだ時点で、スタントマンをやるつもりで行ったんですね。

そうですね。この道でいこうっていうのは考えてました。

——何歳くらいの時にこの道でいこうって腹をくくったんですか?

もともと保育士になりたくて。子ども大好きだから。

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——そうだったんですかー。

小さいときはずっと保育士になりたいって思ってて。今、保育士の免許が取れる通信の学校に行ってるんですけど。別になろうと決めているわけではないんですが、いつかおばさんになってパートをやるにしても、資格持ってるのと持ってないのじゃ、全然違うと思って。
スタントを最初にやり始めた頃から、好きでやってたので、この仕事をやろうって決意してたのかなって思いますね。

——じゃあ途中までは保育士とスタントマンとで迷ってたんですか?

多分なかったですね。結構な差で。
保育士にはなってみたいけど、スタントマンの方が絶対なりたいなって。

——中学生くらいの時にはすでに?

はい。ただ子どもが好きってだけなので。でも、体が動かなくなったりして、おばさんになったら、パートでは保育士の仕事には就きたいなって思います。スタントマンの仕事は、女性ってすごく寿命が短いと思いますね。怪我したらもうおしまいですし。

——そうですか。スタントマンになることには特に疑問を持たず、ごく自然に?

みんな結構やりたいもんだと思ってて。

——え、スタントをですか?

飛んだりとか。みんなやりたいのかなと思ってて。スタントの仕事は、プリキュアのミュージカルショーとか、イベントとかもやっているんですけど、人に何かを見せるっていうのが、多分自分の中ですごい好きなことだと思うんです。
やりがいがあるので続けてるのかな、と思います。

——人に見せるのが好きとのことですが、スタントだと、「私」じゃなくて、「誰かの代わり」になりますよね。「私」が出たいとは思わないんですか?

そういう強い想いはあんまりないんです。なんていうんですかね、裏でやってるからかっこいい、じゃないですけど。
なんだろうなー、うーん・・・。着ぐるみショーとかは、かぶってますけど、ショーをやってて皆が感動して泣いてたりとか。子どもが、「がんばれー」って応援してたりとか。そういうときに、こっちも元気をもらえるんです。
自分が出たい、と思わないのはお芝居が全然できないからでしょうか。

ーー特に何かきっかけがあったわけじゃなく、気がついたらこの道にいた感じでしょうか。

小さい頃からお父さんを見て、かっこいいなって思ってたので、一番大きいと思います。尊敬してたので。

オフィスワイルドの創業者でもあるお父さん

オフィスワイルドの創業者でもあるお父さんは、柴原孝典さん

 

 

父は日本記録保持者

ーーお父さんはどんな方なんですか?

宇宙刑事シャイダーや、宇宙刑事ギャバンなどのヒーロー役をやっていました。そういうのを見たり。
それと日本記録らしいのですが、42歳のときに、42mから飛んだんですけど、そういうのをやってたりして。

——飛んだって何ですか・・・?

飛び降りですね。高さが42m。

——日本で初めての記録なんですね。

日本の新記録って言ってました。世界だったらもっと上の記録があると思うんですけど。

ーーそんな姿を見て。

普通の人じゃ絶対できないし、すごいなって思いますね。実際この仕事をし始めて、私は20mだったらあるんですけど・・・

——すごい(笑)

42mって考えたら絶対できないなって思って。すごいなって。

―――家訓はありました?

礼儀は大事だよ、って教えられました。親が現場にいるから、余計に。でも、筋トレは自分で毎日やってました。

―――スタントマンの仕事をする前からですか?

中学校の時、強いバレー部に入っていて、監督も厳しかったんです。体操も小さい時からやってたので、基礎的な筋肉はできてたんだなって。

 

「運動神経、悪かった。足遅いし、泳げない」

――運動神経よくないと、スタントマンはできなさそうですね?

私は運動神経、本当に悪かったので、努力次第かなって思います。私、かけっことかも絶対ビリだったし、足遅いし泳げないし。

――何だか、誰かが励まされる気がします。なぜ身体を動かす仕事が好きになったんですか?

今でも体を動かすのはあまり好きじゃないかもしれないですね。
でも、自分の中でスイッチのオンオフがどこかにあって。仕事中だけにスイッチが入るんです。
普段はダラダラしてますし、いつオンになるのか自分でもよく分からないんですけれど。

——初めてのスタントマンとしてのお仕事は何だったんですか?

何だっけなあ。火だるまとかですかね。多分。

——えー(笑)。初めての仕事で!

飛び降りだと、着地する体勢を自分で作ったりしなきゃいけないけど、火だるまはそういうものではないので、周りの方のが大変です。確か高校一年生くらいだとおもいます。中3の終わり頃からお稽古を始めて、お仕事として初めてしたのは、プリキュアのショーでした。

——初めての火だるまはどんな気持ち?

怖かったですね。すごい怖かった。

——燃えないんですか?

ファイヤースーツというものを着て、ジェルも塗って。怪我とかはしないんですけど、目の周りは全部火だったり。あと呼吸があんまりできないので、そういうのが怖かったです。

——目の周りって・・・

ちゃんと被るものがあるんですが、目のところはあいてて、見えます。もっとベテランな人だと、そういうのも被んないでやってるんですけど。多少の火傷とかは多分してると思います。

——なんで平気なんですかね?

わかんない(笑)

——今までどんな怪我しましたか?

アザとか、傷、かすり傷とかは日常茶飯事です。半月板損傷したのが一番大きい怪我ですね。

——初めてお仕事としてスタントやったときに、すっごく楽しいって思ったんですか?

今までやった仕事で本当に嫌で、「やめてやろう!」って思った仕事も何個かあったんですけど(笑)。
だけど、スタントが終わった後の達成感とか、周りの人がすごい拍手してくれたりとか。
作品が出来上がって、自分で見たときの達成感とか。周りの人がすごいよかったねーとか言ってくれると「あー、やっててよかったな」って思います。

オフィスワイルド内の一角でトレーンングをする人

オフィスワイルド内の一角で懸命にトレーンングに励む人を発見

 

「普通に生活してるときに、『飛んで』って言われても絶対できない」

スタントマンのお仕事はどんなもの?

——飛び降りで、これ以上は無理だって高さはあるんですか?

実際仕事で、カメラマンとかがいて、監督がいて、「じゃあお願いします」っていわれたら飛ぶしかないから、仕事だって感じになる気がしますね(笑)。
多分こうやって普通に生活してて「じゃあ飛んで」っていわれたら絶対無理ですけど、仕事スイッチが入って、やんなきゃいけないってなったら、やると思います。

——なんで怖くないんですか?

怖いですよ。多分、スタントマンの方はみんな怖いと思います。そういう怖いって気持ちがないと、怪我したりとか。だから緊張感を持って、何に対してでもやらないと。逆に、こんなの余裕だって思ってる人は、多分スタントマンに向いてないと思いますね。危機感がないっていうか、怪我しちゃう。

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「休日は、お昼まで寝たり、お買い物や岩盤浴、カラオケなどに行きます」そんなところがまたいいです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――今までの仕事はどんなものですか?

着ぐるみショーやプロモーションビデオ、CMや映画の吹き替えです。パチンコの映像のアクションシーンなども多いです。

ーー最近はどんなお仕事を?

一番最近だと、『黄金を抱いて翔べ』や、今度公開される『おしん』にも携わりました。それと、海外で、最近まで撮影をしていました。中国から依頼があり、日本のスタッフで作った映画です。撮影は毎日スケジュールが朝から夜までぎっしり入っていたので、充実していました。文化が全然違うので、撮影より生活になじむ方が大変でしたが。3ヶ月行って撮影をしたのは楽しかったです。

――疲れを感じることは?

日本帰ってから気が抜けて具合が悪くなったこともあったのですが、その時は気を張っているから疲れるとかは無かったです。

――好きなスタントは?

飛び降り、火だるま、よく映画で使われるワイヤーアクションは好きです。見栄えがいいので。映像見ると、「すごい!」って思います。

ーー嫌いなスタントはありますか?

車にはねられるのは痛いので、好きではないです。スピードにもよるんですが。やっぱり怖いですよね。階段落ちも痛いです。下手なだけなんですけど・・・。

――痛くても辞めたいほど嫌だとは思わないんですよね?

そのときは痛い!って思うんですけれど、完成された映像を見ると、達成感があります。

――達成感が勝つんですね。仕事の好きなところは?

達成感とか、監督さんからよかったって言われると嬉しいです。普通の人にはできないじゃないですか。周りの人に「良かったよ」と言われるとやりがいを感じます。辛いことは、忍耐が必要なことです。それと、女の人が少ないので、たまにお仕事をするダンスの現場は、女の人が多いのでほっとします。

ーー 一日の流れはどんな感じですか?

撮影だと早朝から夜中までや次の朝まで。キャラクターショーは一回目と二回目のショーの時間が決まっているので、片づけが終わったら帰れるとか。稽古の日は夜7時から9時までなんですけれど、大体週に3回やっています。

ーーひと月どのくらい稼働していますか?女性のスタントマンは少ないとの事なので、需要は多いのかなと思ったのですが。

多分、男性と比べると多いのかなとは思うんですけど。月によって、入って来る仕事の量は全然違います。

 

稽古中の俳優さんたち。

稽古中の俳優さんたち。

 

お給料の具合は?

ーーお給料が歩合制なんですよね?「笑っていいとも」では、15日稼働して42万円ということでしたが。

15日で42万円は、一番いい時のお給料で、もらってない時は全然もらってない月もあります。
あくまで一つのケースなのですが、ベテランの方の飛び降りで、一回300万円くらいという人もいます。でもそれはその人が全部貰うのではなく、アシスタントの通勤費やマット代など、事務所の経費として使われるものも含まれているお金なので、ひとつのスタントで、いくらという感じです。

ーー命はったお仕事ですもんね。火だるまと飛び降りなど、仕事内容によって値段が変わるということですが。

飛び降りも高さによって値段が変わったり。10メートルと30メートルでは違いますね。私が一番高かった飛び降りは、20メートルで、このスタジオの上からです。
マットは道路幅くらいで、その横に川が流れているので怖かったんですけれど。実際の大きさよりは、マットがだいぶ小さく見えますね。

――命綱ないんですもんね。想像するだけで怖いです。

足からは絶対降りちゃいけなくて、背中から、というように飛び方も決まっているんです。跳び方は稽古で教わります。週一回、近くの体育館で練習しています。練習場所が体育館しかないので、そこからいきなり現場に入ることになります。「はい、20メートルいきます」って言われたら、もう跳ぶしかないんです。跳び方もいろいろあって、低かったら腹落ちって言ってお腹から落ちたり、ポセイドンっていう一旦空中で小さくなって飛び降りるものや、一回転して背中から落ちるのもあります。

ーー痛そうですね・・・。

落ちたら、「ウッ!」ってなりますね。心臓が痛いです。

ーー跳び方の指示があるんですか?

映画の自殺シーンだったら、そのまま落ちるとか。突き落とされたら暴れながら落ちるとか。監督によって指示があります。監督さんからは「スタントマンだから、何でもできる」と思われがちなのですが、本当に危ない落ち方だと思ったら、別の方法を提案します。怪我や死者が出たら終わりなので、作品を作るときには安全性も考えてもらえます。

オフィス内で、忍術の向上に励む人も発見

オフィス内で、忍術の向上に励む人も発見

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スタントマンといったらこの人」というようなスタントマンに

――仕事に求めていることはありますか?

自分が上手くなるしかない世界なので、自分次第ですよね。映像の吹き替え(アクションシーンやスタントシーンでの代役)だと、役者さんと同じ体型や身長があるので、大きなモデルさんや小さい人の吹き替えはできません。限らてしまうのはあります。

ーー仕事お好きなんですね。

はい!

――スタントマンの女性の寿命は短いとの事ですが、もし、何十年後かに、身体を今までのように自由に動かせなくなったら、そういうときにどうやって向き合っていこうと思いますか?

結婚や出産後に仕事をするのは難しいでしょうね。でも、その後も仕事をしたいと思ったら、筋トレを自分で始めて、元の体に戻るように努力していこうと思います。

ーー仕事でのこれからの目標はありますか?

難しいですねえ。なんだろうな、う〜ん・・・。
女性のスタントマンといったらこの人!みたいな、色んな人が知ってくれているようになりたいですね。

――これから、お仕事でも人生でもかまわないのですが、どのようにしていきたいと思っていますか?

今は結構満足してますね。幅広いジャンルで仕事をしているので。映画の撮影などの映像の撮影とか、もっとあったらいいなって思います。

――ケンカを売られたら、勝つ自信はありますか?

ないですないです!アクションって当てているように見せているだけで、当てないように見せるのが仕事なので、ケンカとは全然違いますね(笑)。

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編集後記

取材が終わった後、沙季華さんがでている大橋卓弥のPV「はじまりの歌」を見た。メガネを掛けた女子高生が、沙季華さんだ。
ギャップ萌えとはこの事をいうのだろうか。多分私は、ギャップ萌えした。さきほどまで目の前で一生懸命取材に応じてくれた女の子がやっていたとは思えなかった。沙季華さんは一見普通の女の子なのだ。街を歩いていても、スタントマンをやってると言われなければ、まだ将来が決まってないような大学生にも見える。雰囲気もとってもふんわりとしてるし、機敏な動きをする気配もないように思えた。
すごいって思うと、なぜか笑ってしまうものだけど、そのPVを見て、笑った。取っ組み合いも出来るのかと驚いたけど、あのスタントはまだまだ序の口のものなんだろう。それでも結構笑ってしまったので、火だるまや飛び降りのアクションを見たら大笑いしそうだ。
これから何かスタントっぽいものを見たら全部沙季華さんだと思う病にしばらくかかりそう。
そしてこの取材をしてから映画などを見ると、ちょっと見方が変わったことに気がついた。スタントマンに想いを馳せながら見たりするようになり、時たま本筋を置いていってしまうことが・・・。
そんな角度から映像を見るのも、また違って楽しいかもしれません。

 

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*沙季華さんが携わった
これから公開予定の 映画 『おしん

一体おしんのどこにスタントがあるんでしょうね?

*所属事務所「オフィスワイルド」

http://www.studio-wild.com/

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取材:ドクガクテツガク編集部    高橋ミホ(文・編集) かな子(写真) 【取材時 2013年6月末】

 

 

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