5/18(土) 老婆の休日

5/18(土) 老婆の休日


瀟洒な喫茶店の、女主人の話である。
胸に紫の円いブローチを付けた白髪の女主人は、
中年の客と映画の話をし始めた。

「5月は私の誕生日だからね。昔、この店で20年働いていた人が、芍薬や薔薇や牡丹の
切り花を、20本くらい花束にして持ってくるの。青春時代をこの店で過ごした人なんです。
私は豪華な花が好きだから。

おじいさんなんだけど、もう70近いわね。今は頭なんか禿げちゃって。
ブラームスの好きな人でね、奥さんは写真をやってて、優雅な人なの。
色んな所に出かけてるんだって。戦争に行った人は気丈ですよ。大正生まれのひとは気骨がありますよ。今の人は失言ばかりして、どうしようもないわね。振る舞いって、身に備わるものなんじゃないですか。

『アモーレ』っていう映画さ、近所でもやってたんですか。私、渋谷でしかやらないと思ってて。渋谷なんか出るの、もう大変。改札から出ること考えると、老婆にはさ、そんな老婆の休日なんて大変よ。銀座だったら、乗ればすぐなんだけど。

私が好きだったのはさ、北欧の映画でね。老夫婦が、お金に困って強盗やるのよ。年金が足りないってね。デンマークだかフィンランドだか。車に乗って夜道を走るんだけど、ハンドル思いっきり切って逃げ出すの。

あとは、『マリーゴールドホテル』の映画。終の住処をインドに求めて、仏蘭西から老人達が、出かけるの。中には車椅子の老人もいるんだけど。豪華な夢みたいなホテルだと思って行ったら、お化け屋敷みたいなところだったの。

私の父親が仏蘭西映画好きだったから、終戦後にいくらでもチケット買ってくれてさ。いつ見ても、一度見たことあるような気がする。

映画から教わるものはいっぱいあるから、見なきゃいけないわね。」

(ドクガクテツガク編集部 かな子)

 

 

 

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