フリーライター 石原たきび氏にインタビュー

フリーライター 石原たきび氏にインタビュー


 

フリーライター石原たきびさん インタビュー

記事を読むときに、記事だけでなく、記事のライターの名前をなんとなくでも見ている。
そんな方は、石原たきびさんの名前になんだか見覚えがあるかもしれない。
特にR25読者の方など、なじみ深いのではないだろうか。
石原たきびさんの記事を読むたび、どんな人だろう、どうやって仕事をしているんだろう、 どんな経歴の持ち主なんだろう、どんな頭の中なんだろう。
そう思っていた。ずっと興味があったことを、教えてもらった。

石原たきび プロフィール
フリーライター。俳人。たき火の会主宰。1970年、岐阜県生まれ。毎日飲んで、週に2日ほど記憶をなくす。 自転車をなくすなどの失敗は、月2回ほど。道で寝る癖は全くないため、そのへんは助かっている。編著『酔って記憶をなくします』(新潮文庫)など。
facebook:https://ja-jp.facebook.com/takibi.ishihara
ツイッター:https://twitter.com/ishihara_takibi

石原たきびさんの住む街、高円寺の駅で待ち合わせる。
取材場所すら我々は決めていなかったので、たきびさんにおまかせしてしまう。
連れていってくれたのは、ガード下付近の飲み屋さん。簡単な作りのテーブルと椅子の
外の席で、街ゆく人を眺め、街の喧噪を感じながらの取材が始まった。
石原さんは自ら、自分がお仕事をした雑誌などを持って来てくださっていた。

たきびさんの最近のお仕事

 

——こういうネタって、自分で探すんでしょうか?

雑誌によって違って、例えばモノ・マガジンだったら企画がすでにあって、こういう感じでインタビューしてくださいとか。それぞれだね。R25の場合は、ネタをみんなで持ち寄って、みんなで雑談をする会議が月1回あって、そこでエントリーされる。
ただ、ほとんど男だから半分以上下ネタとか雑談だよね。

——下ネタは企画通るんでしょうか?

あんまり通らない。でも、今取材してるのは、いわゆる男性器が、右にいったり、左にいったりと不安定なのをフィットさせるポジフィットっていう男性用の新商品のパンツをワコールが発売したんだけど、それを出したら通った。
で、アンケートを男性読者にとって、僕は右ですとか、僕は左ですとか。上ですとか。
それと識者の意見も知りたいから、泌尿器科の先生とか色々あたったんだけど全部断られて。
すごく苦労したんだけど。でも最終的に、いわゆる包茎とかやっているクリニックの名古屋の医院長先生が受けてくれて、すごくびっしり答えを書いてくれた。
通常のポジションとか、下着の圧迫によるよくないこととか、医学的な見地でコメントしてくれて。
アンケート、識者コメント、あと、たまたまサンプルがワコールから今日届いたから、それを今はいているんだけど、その感想の3つ巴で記事にしようかと思っていて。

——はき心地は違いますか?

なんか、違うんだよね。

フリーライターになるまで

 ——たきびさんは、もともと塾講師だったんですよね。

高校までは自分の田舎である岐阜にいて、大学は長野の信州大学に行った。1年留年したから5年いて。で、仕事が決まってないまま、岐阜に帰るのも嫌だし、長野にも残る気持ちもなかったから、東京の武蔵境ってところに家賃3万円の風呂なしアパートを見つけて、引っ越してきた。当時俳句に夢中になっていて、週3日は休んで俳句を作りたいと思ってて、そしたらそういう仕事が塾くらいしかなくて。結局東久留米の、主に中学生相手の塾で4年働いた。

——塾はなんでやめたんですか?

妹と双子の弟がいるから、いつも勉強教えてて、そういうのもあって、すごい教えるのうまかったんだよね。かつ、生徒の成績も上がってて、保護者とも仲良くて、まあ楽しくやってた。だけど、これ以上あげようとおもったらスパルタにするしかないなと思って。そういうのも嫌だし、もう4年やってだいたい同じことの繰り返だから、じゃあ転職しようと思って。で、雑誌とか本が好きだったから、出版、何もわからないまま編集部ってとこにいこうと思って。求人誌見たら、リクルートの住宅情報編集部が募集してて。それがたしか97年だから、27、8歳から。そこから出版人生が始まった。

——そうだったんですね。諸々と意外です。

編集部で別荘とかのムックも作ってたんだけど、そこの編集部にいて、リゾート地に取材しにいったりとかしてた。そこで色々教えてもらって、まあ2年で辞めるんだけど。

——在籍中から他の書籍や雑誌を作りたくなったんですか?

業務をアウトソーシングして、そのプロデュース的なふうにしましょうって編集部に入って1年くらいでなって。自分で取材も行っちゃいけないし、それが嫌で、転職しようかなって、探した。

——なるほどー。

辞めたあとは、みうらじゅんさんとか清志郎さんとかの本を作ってる、渋谷にある10人くらいの、書籍だけを出す小さい出版社で、そこで3年くらい。リクルート時代と違って、そこはわりと自由に動いてよくて、いい企画を作って、売れる本を出せみたいなやりかただった。
で、あるとき社長がコカイン所持で逮捕されて、会社が解散。どうしようと思った時期に、リクルート時代の知り合いから、「今度R25っていう、いつまでもつかわかんないけど、ちょっとおもしろい雑誌をつくるからやりませんか?」って声がかかって。未だに覚えてるのが、新宿のゴールデン街に呼ばれて、酒飲みながら、熱く語るみたいな、一昔前の出版みたいなことを、今はもう異動してしまった編集長とそういうことをして。そこからフリーになった。

——じゃあフリーになろうと思ってなったわけじゃないんですね。

そうだね。独立しようと思ってしたわけじゃなくて、結果的にそういう流れでしなきゃいけなくなったところに、そういう話がきた。そう考えると、大学でてから今に至るまで、偶然の繰り返しといえば偶然の繰り返しなんだよね。皆そうかもしれないけど。
今やってる仕事も、全部昔の知り合いとか、知り合いの知り合いとか、全部つながってる。全然知らない人から、仕事お願いしますって、基本的にはないから、そういった意味では、全部無駄ではなかったんだなって。

——もっとさかのぼると、今につながるような子ども時代の自分の事は覚えてますか?

今ふと思ったのが、子どもなのに年賀状、すごく凝ってた。小学校の頃、表に宛名だけ書いて、裏は何も書かず真っ白のまま。下の隅っこに「あぶり出しです」って書いて、あぶりだしでも何でもなくて、ただ焦げたっていう・・・。あとは、江戸川乱歩の少年探偵シリーズとかを図書館で借りてたくさん読んでたかな。

——今も本はたくさん読むんですか?

今は全く読まない。雑誌は、テレビブロスと、ブブカと、裏モノJAPANくらいしか買わない。映画も見ないし。

——前はどうだったんでしょう。

昔は映画も本も色々。アートイベントとか気になるの探して見に行ったり。でもそれが全部面倒くさくなって、ただお酒を楽しく飲むのが楽しいっていうシンプルな結論に。

——どうしてなんでしょうね。

人が作ったのを見るのが面倒くさくなった。だったら、生身の人間と飲んで、毎回みんなコンディションも話題も違うから、そういうのよりいいのかなとか。まあ、単純に昔から、映画見に行くと真ん中くらいで寝ちゃうんだよね。肝心な展開とかがわかんなくなったりして。まあ向いてなかったんだね。

大学時代は経済学部。世の中の仕組みを知りたいと思って、マルクス経済という古いゼミに在籍。

 

お酒と、たきびさんのエトセトラ

お酒を飲むのが楽しいというたきびさん。お酒を交えてのこの取材や(我々お茶ですみません・・)、その飲んでいる雰囲気や、気がつけばちょいちょいお酒にまつわる出来事の話になってるのを思えば、言わずとも感じ取れた。というか、いつの間にかお酒がメインの話になっていた。

 最近は気を付けて飲むようにしてるから、あんまり失敗はないけど、本当に色んな失敗をした。モノなくしたりとか、自転車の止めた場所わかんなくなったりとか。あとは布団の横に靴が並べてあったりして・・・玄関の場所がわかんなくなったみたいで。その集大成がこの本(『酔って記憶をなくします』石原たきび編(新潮文庫))なんだけど。

 

——今まで何をなくしたんですか?

まあ自転車はしょっちゅう停めた場所わかんなくなるし、記憶ないけどお金減ってるとかはよくある。ケータイとか、鞄まるまるとか、ただ奇跡的に仕事に今のところは支障は出てない。高円寺の知り合いが、あそこに自転車とまってたよって教えてくれたり、あとケータイは、ケースをとったところにパソコンのアドレスを書いてて、「拾った方はご連絡を」って念のためやっておいたら、本当に連絡がきて、駅の交番に預けてもらったりとか。

——おおー、やさしいですね。

この本に自分で入れたのは、近所のファミマにいったら店長が「石原さん」ってなんで名前知ってるんだろうって思ったら、よれよれの字で「きょうはおかねがないのであしたはらいます  いしはら」って携帯番号が。

——コンビニでツケで買ってた 笑。この本の中だと、居酒屋で隣にいた外国人の葉巻を奪い取って、「GHQ!」て言ったのとか、ツツジの蜜を吸っちゃう風流な人のエピソードが好きです。

これ、7:3で女性が多いんだよね。まあ男も記憶をなくすんだけど、女性のほうがクリエイティブな失敗をする。あと、ここ1年くらいは、すごい酔っぱらうと、多分どこかで記憶をなくしたがってるというか。そこで一日を終わりにしたいというか。記憶があったら終わらないじゃん。あるうちは飲みたいし、楽しいし。

——そうですか・・・? お酒の味が好きなんですか?

雰囲気かな。一人では基本的にあんまり飲まないんだよね。こういうところで、わいわい飲むのが好きかも。でも、お酒をおいしく飲むのは本当に難しいと思う。すごく楽しくても、朝起きて記憶がなかったら飲まなかったのと同じでしょ?昨日も楽しく飲んだんだけど、途中から記憶がなくて、一緒に飲んでた人から動画が送られてきて、北口広場の若者3人組のギター持って歌ってる人たちと一緒にエレファントカシマシを熱唱してて。もったいないよね、もし動画がこなかったら、記憶から抹消されてるわけだから。

 

たき火の会の実態

お酒のほかに、人の書いた文字がとても好きらしく、手書き部というのをやってみたり、雨宿り部(雨が降ったら公園などに行き、ひとりでビールを飲む)というのをやったりしている。なんて風流な方なのか。さらに、自身の名前でもあり、主宰でもある「たき火の会」について聞いてみた。

——たき火の会をやってるそうですが。

たき火はリクルートに入った97年に、アウトソーシングしなさいって言われて、嫌だなと思ってて。かつ、社内が分煙になって、タバコを吸う場所で男4人くらいが、いつもそこでタバコ吸いながら雑談してて。そこで生まれた。何気なく、俺が「たき火ってそういえば楽しかったね」って話をして、じゃあやろうってなった。その月末に第1回をやったら、こどもから上司まで30人くらい来て。それで、定期的に続けてたんだけど、最近は都内でやるとたいてい怒られるから、それがつらくて、あんまりやってない。

——決まり事など作りましたか?

たきびの会は、網は禁止。レルクリエーション色が強いものはダメってことに会則でなってる。あと、必ずすぐに反省会をひらく。新橋の飲み屋の座敷で、火の具合がどうだったかとか、薪の調達にぬかりはなかったかとか、そういう反省会をして、俺が議事録を書いて、それをコピーして郵送するっていうのを最初やってた。でもそれもけっこう大変だから、途中からやめたけど・・・。でもたき火はいいですよ、本当に。

——たき火は、他の遊びと違って何が特にいいんですか?

単純に火を見ながら飲むお酒がおいしいくて、火がかっこいい。それと、手分けして薪を集めたりとか。あと、会の歌を作ってるんだけど、それを皆で歌ったりとか、ばかばかしくていいね。プラス、けっこうお酒のんでるせいもあるけど、意外な打ち明け話とかをポロっとしたりするのがおもしろい。だから、ぎゃーぎゃー騒ぎながらというよりは、しんみり杯を傾ける感じ。

——どういうメンバーで構成されてるんでしょうか。

リクルート時代の喫煙テーブルの人達を中心に、だんだん増えてった。ただ、会員名簿とかなくて、多分100人くらいになっててるんだけど、どうしたらいいかわかんない。でも、みんなやりたいんだなと思って。たき火。

もしかしたら、大きな分岐点?
「石原たきび」のペンネーム

もともとR25で、たき火のDVDを紹介した記事を書いて、当時すでに「たき火の会」をやってたから、原稿の最後に、「たき火って本当に素晴らしいし、この記事を機に、名前をたきびに変えます」って思いつきで書いたそこから石原たきびに変わった。それまで石原浩樹っていう本名でやってて、それがわりと大きな分岐点じゃないけど、トピックだった。

 

——「石原たきび」というペンネームに名前したら、けっこう状況変わりましたか?

多分変わったと思う。比較検証できないからわかんないけど。それに、本名じゃなく生活するのがなんか楽しい

——でも別にキャラをかえるわけじゃないんですよね。

うん。ではないんだけどね。 みんな「たきびさん」って呼ぶ。自分がたきびだとおもうと、ちょっとあったかい気持ちになる。

——いいなー。

ドコモとかから請求書が本名で届いたりすると、自分じゃないのかなって思って、ラッキーな気持ちになったり。払わなくていいのかなって。

——それにしても、とてもいい名前ですよねえ。

本当偶然だよね。記事書きながらたまたま思いついた。R25は毎回800字だから、最後の2行くらいで、何かおもしろいことをいつも書こうと思ってるんだけど、それが思いつくこともあるし、思いつかないこともあって。たきびの時はたまたま思いついたんだろうな。

「こういう時、ここに火がある感じで飲んでる気がする。エアー火がここの真ん中に。」  すみません、どこ撮ってるかわかんない写真になってしまいました。

 

——ペンネームにして良かったことはありますか?

うーん、覚えやすいことと・・・相手もイメージしやすいし、「たきび」っていう文字面もかわいいし、音もいいし。うん。

——ほんとうにいい名前だと思います。私もたきびにしたいくらいです。

今まで知ったバンド名の中で、一番かっこいいと思ったバンド名は?俺は、「水中、それは苦しい」っていうバンド。かっこいいよね。「カレー、おいしい」みたいな感じじゃない。心理をそのまま言ってる。あと「踊ろうマチルダ」。

——うーん、「ホライズン山下宅配便」とかですかね。

ネーミングセンスって大事だよね。

——そういえば、とても意外だったんですがご結婚されてるんですね。

うん。よく生活感がないっていわれる。結婚してるって見えないって。別に隠してるわけじゃないし、皆知ってるんだけどね。

——結婚のきっかけは?

結婚12年目なんだけど、きっかけは、たきびの会。キャンプたき火をやったことがあって、その時は多分あいさつくらいしかしなかった。で、その3日くらいあとに、新橋でよくいってる飲み屋がかぶってて。

——家でどういう話をしてるんですか?

ニュースの事件とか見て、かわいそうだね、とか。そういう(笑)。あんまり生産的な話はしない。あと、ご飯を週に2回くらいどっちかが作ったりして一緒に食べるんだけど、例えば平皿にのせたチャーハンだとして、それをぜんぶ食べ終わったら、そのお皿を見せるっていうルールが。まあ、そういう恥ずかしい家庭のルールとかってあるよね。

生理現象はないことにしてる。結婚12年目だけど、おならとかしないらしい。

 

 フリーライターとは何ぞや

——月に何日くらい働いているんですか?

全く仕事しない日はあんまりないかもしれない・・・。けど、忙しいライターと比べて、徹夜徹夜とか全くないし、割とマイペースで、やってるかな。しかも不思議なもんで、一つの仕事が終わると、新しい仕事がきたりして、奇跡的に、なだらかに

——じゃあ毎日飲めるんですね。

そうだね。

——ネタ探すの上手だなって思うんですが、意識的に探してるんですか、それとも自然にひっかかってくるんですか?

ブログは本当にフリーだから、おもしろいことをやろうとおもって考えてやるんだけど、R25はもうずっとやってるから、みんな、ほぼネタ尽きてて。あるネタを、どう見せたらおもしろいとか、そういうことなのかなあ?ただ、メモは生活しててすごく取る。で、携帯で自分ちのパソコン宛てに思いついたことをメールする。手帳に書くの面倒くさいから。

——日々ネタ探すのって苦じゃないですか?会社員のときって、土日とかオンオフがあったわけじゃないですか。

あー、でも会社員のときも、なかった。リクルートはまあともかく、単行本の出版社のときは、やぱりどんなおもしろい人がいるかとか、どれが本になるかとかは、ずっと考えてたから。

——そういうのはもともと全然苦じゃなかったんですか?

そうだね、今でもそんなに飽きないかな。写真もたくさん撮る。昔デジカメ持ち歩いてたけど、今はもうスマートフォンで綺麗な写真撮れるから、もうこれでいいかなと思って。おもしろい看板とかあったら撮りたくなるんだけど・・・。でも難しいよね。おもしろいでしょ、みたいなの見せられても、えっと思うことも最近あって。

——では、自分がおもしろいと思ったものが、人から見てもおもしろいと思われるかどうかって、どうやって決めるんでしょうか。

それはあんまり考えないし、わかんない気がする。なんだろうね。

たきびさんの取材道具。ペン、ノート、ICレコーダー。「サラサっていうペンが一番書きやすい」

 

——インタビューの質問で、どういう質問がいい質問だと思いますか?

いままでされたことない質問。基本はおさえて、相手が、こんな質問するんっだっていう質問。けっこうみんな質問って似通っちゃうじゃないですか。どんなインタビューでも、ちょとおっ、と考えさせるようなものをするようにはしているんだけど。それと、人ってだいたい変わってるから、それをどう引き出すかってことだよね。インタビューって。ちょっと格好いいこというと。

——ライターのお仕事は、おもしろいですか?

おもしろいねえ。

——ライターの仕事の何が好きだなあって感じますか。

インタビューも楽しいし、原稿書くの、まあエンジンかかるの遅いから、書き始めたら楽しい。あとインタビューして1時間話聞くじゃん。で、ありがとうございました、ってICレコーダー止めて、雑談5分くらいするんだけどその5分ですごくいい話聞けるの。相手もほっとしてリラックスするし、こっちもそんな感じになってきてるし。商売心なく雑談するから、そこでいいものが出てきたり。あと基本的にみんないい人だからね。

——文章書くときに、気を付けてることはありますか?

うーん・・・。紋切り型にならないようにしてる。ぜひ試してみては、とか、情報誌とかにありがちな言い方は、あまりしないようにしてる。だけど、そうはいっても、取材した伝えなきゃいけないことはあるわけで。自分のブログの日記じゃないから、書かなきゃいけないことはあるんだけど、それにいかに自分しか書けないことを入れるか、みたいな感じかな。でも、R25はけっこう削られる。これはいりませんね、とか(笑)。自分なりの書き方は書くようにしてる。あと、びっくりマークをつけないで、びっくりマークの効果を生む文章を書きたいな、と。

——記号に頼らないって難しいけど、やってみたら書く力つきそうですね。

特に絵文字とかの世代の人はきついよね。

たきびさんの一番好きな俳句。「蝶堕ちて大音響の結氷期」富澤赤黄男

 

——悩みはありますか?

悩みはないけど、課題はある。「酔って記憶をなくします」の話もそうだし、最近やってないたき火もそうだけど、自分の好きなものが、肩書きの代名詞代わりになればいいなと思う。あと、ライターの仕事って、基本的にお願いしまくる仕事だから。取材お願いしますとか、写真撮らせて下さいとか。お願いし続ける人生もつらいなと思ってて、徐々に変えていかなきゃいけない気もする。まあだいたい楽しいんだけどね

 

 

「本当にお酒いっぱい飲むから、お金がどんどんなくなっていくのが怖くって、ATMでお金おろすとき、残高を見ないように薄目で操作してる」

 

財布、20年以上持ってない

——あと、これは何かいっておきたいということはありますか?すみません、取材不慣れで。

20年間以上、財布を持っていない。生でポケットにお金いれてる。

——えっ、なんでですか?

当時二十歳くらいで、財布持たないの格好いいかなと思って始めたら、流れで習慣でそうなった。

——じゃあ、ぽっけがない服はもう買わないですね。

買わないし、ぽっけがない服ってあんまりないよね。女性と違って。

——不便ないですか?

不便ない。それは多分、その流れもあるし、荷物を極力減らしたいっていう気持ちがいつもあって。あとは、なくすと怖い。財布なくしたら、カードも現金も、免許証も全部なくなるから、そのリスクヘッジのために。

——へー。

まあ、自分ルールとか日々の細かい生活の話をしだしたらキリがないし、それがその人に一番ちかい像なのかもしれないね。あえていうまでもないことってあるじゃん。二人も絶対あるはずだよ。

——たきびさんはほかに自分ルールはありますか?

右足で階段を降りるようにしてる。最後の一歩を右足にしてる。

——なんででしょう。

わかんない。それ俺が聞きたいし、もうやめたい。面倒くさいから。だって歩数合わないときは調整してるんだよ。直前で。こう足踏みしたりして。そこまでじゃないにしても、そういう細かいこだわりってない?

 

こうして、明るい時間から始まったインタビューは終わった。気がつけば辺りはうす暗くなっていて、高円寺の街は、飲み屋のお客さん、これからごった返します、といった雰囲気を醸し出していた。人はもちろん、犬や猫、お巡りさん(人ですが)が前を横切りながらの、そして電車の音や飲み屋で騒ぐ人や威勢のいい店員さんの声を耳にしながらの取材だった。たきびさんは何杯ビールを飲んでいただろうか。取材後、たきびさんが毎日行ってるというコーヒー屋さんに我々はのこのこついていった。

たきびさんとコーヒー屋さんのみなさん。みんな常連さんらしく、みんな知り合いのもよう。

 編集後記

普段お仕事でインタビューをしている側の人である石原たきびさんに取材するのは、また違う緊張があった。電話でお話したとき、とても頭の回転が早そうで、賢そうだったので、これはヘマをしたらミンチにされるんじゃないか、とお会いする前はちょっとびくびくしていた。でも、実際お会いするととても無害な雰囲気が漂っており、もともと抱いていた印象とそう変わらなかった。取材後も、「内容的に大丈夫?」と心配してくれたり、色々と気をつかってくれた。

R25を習慣として読んでいた頃、自分が好きな記事は、たいてい石原たきびさんが書いてることに気づき、次第にたきびさんの名前を確認してから記事を読むようになった。さらにデイリーポータルZというWEBサイトでも、同じことになっていた。それで、どんどんたきびさんに興味を持ち、今回の取材に至ったのだ。たきびさんは、ペンネームを「石原たきび」にしたことが、もしかしたら分岐点かも、と言っていたが、私にしても、まず名前が印象的だったからこそ、興味を持ったのかもしれない。それまではライターさんの名前を確認することはなく、たきびさんをきっかけとしてライターさんの名前をチェックするようになったのだから。
ということで、これを機に私も高橋たきびにしたいところだが、モロパクリになるので、「ジョンソン・高橋・ジョンソン」とか、「高橋めほ」とかはどうでしょうか。ちなみに、この日たきびさんは我々のペンネーム談義にも付き合ってくれた。

お会いして感じたのが、人間が好きなんだなあということ。取材をしていても、逆に我々に質問を投げかけることも多かった。人間に興味があるようだ。それと、風流なんですね、と言ったところ「風流・・・を目指してる」と言っていたが、すでに佇まいが風流だ。たきびさんを見てると、春夏秋冬、四季の香りがしてくる・・・雰囲気がする。

高円寺に住んで約10年だというたきびさん。家から駅までは徒歩10分だが、そこまでの道のりで必ず2、3人の知り合いに会うらしい。今日もそんな高円寺のどこかで、酔って記憶をなくしてるのかもしれない。

 

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たきびさんの記事で好きなもの:・デイリーポータルZより、ノーパンバッティング               ・おだてられながら木に登る
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取材・写真 ドクガクテツガク編集部  高橋ミホ(文・編集)、かな子 〈取材時 2012年10月初旬〉

 

 

 

 

 

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