AntRoom 島田拓氏(アリの通販業者)

AntRoom 島田拓氏(アリの通販業者)


AntRoom 島田拓氏にインタビュー!   取材・写真 高橋ミホ(文) かな子(編集)

とあるテレビ番組で、アリについて語る島田さんをたまたま拝見した。
ほんの数分で、私はどうしても島田さんに会いたくなってしまった。
ちなみに私は特にアリのファンだというわけではない。だから理由はよくわからない。
数ヶ月経っても忘れられない。なんでアリ?アリ専門?アリが生業・・・?
とうとう私はアリ本の企画書を書くようにまでなっていた。もちろん監修候補は島田さんだ。
どうしたことだろう。不健康だ。このままではいけない。
ということで、思い切って取材を申し込んでみた。するとこんな返事が返ってきた。

「いいですよ。では、事務所のアリ部屋での取材でよろしいですか?」

アントルーム 島田拓さんプロフィール

島田拓(しまだ たく) プロフィール

 2001年に立ち上げたアリの通販専門店AntRoom代表。
 1981年東京都目黒区生まれ。動物園やペットショップで働き、
 たくさんの生き物を飼育し、現在に至る。
 アリの素晴らしさを知ってもらうために日々活動中。
 毎日生き物にまみれて暮らしている。

AntRoomホームページ http://www.antroom.jp/

アリ部屋にて

アリ部屋にて、我々の飲み物を用意してくださってる島田さんを待っていた。
アリ部屋というネーミングもなんとも味があるが、部屋そのものも釘づけになる。
これが生の蟻マシーンに違いない。動物の骨格もある。私たちは感嘆ばかりもらしていた。

ガチャ。(島田さん、私たちのための飲み物を持って部屋に現れる)

ーーアリが脱走してました。

そうなんですよ。けっこうちょこちょこ歩いてるんですよ

ーーどっから出るんですかね

いや、これはケースから出てるっていうよりも、
採集してきたアリをこっちに移す作業のときに出ちゃってるんですよ

(しばしアリを観察)

アリって働いているイメージがあると思うんですけど、巣の中でもほとんど動かないんですよね。
なのでお客さんからも、「働きアリがあまり働かないんですけど…」とたまに問い合わせがきますね。
アリって、湿気が無いと生きていけないんですよ。
「蟻マシーン」の裏に針があって、定期的に石膏に水を流し込むんですよ。
それで、湿気を保っています。

 

 

 

 

 

 

ーーこれが「蟻マシーン」ですか?

はい。大きいのが蟻マシーン3号です。
この2号がちょっと小型のタイプです。
初めてアリを飼う方は、だいたいこの2号から飼育を始めて、数が増えてきたら連結していきます。
ーー蟻マシーンも、島田さんが開発したんですよね。苦労しましたか?

島田:苦労はありませんでしたね。
日々試行錯誤しながらの製作は、とても楽しいものでしたね。
今も、より良い形を常に考えていますが、
商品として自信を持って販売できるまでには5年かかりました。

 

 はじめての仕事は15歳

ーーお店を立ち上げてから11年目とのことですが。

一番最初に仕事を始めたのが15才のときです。
東中野に動物堂というペットショップがあったんですよ。
そこには野生動物の猿とか、ハリネズミとか、普通のペットショップでは売ってないようなのばかりを売ってるお店でした。
そこの一角で「自由なものを販売していいよ」と言われ、
山から捕ってきたナメクジとか、ミミズとか、いろんな虫を販売してました。

その時にお客さんに虫の説明をして、お客さんが
「あー、すごいかわいいですね」って言って買ってくれたのがすごい嬉しくて。

「ペットショップで働こう」って、その時に思いました。
高2のときに仕事のほうが楽しくなってしまって、高2で中退して「動物堂」に勤めたんですよ。

ーー高校2年で決断とは。迷いはなかったですか?

この時は、まったく迷いはありませんでした。
両親は、高校は卒業してほしいと言っていましたが、
夢中になるとそれしか見えなくなる性格なので・・・。

ただ、その後、「動物堂」のお店の内容がガラリと変わりました。
今までは野生動物を扱うお店だったのが、フクロウ専門店になったんです。
それをきっかけにそこを辞めて、別のペットショップに勤めることにしました。17歳の頃です。
そして次に、「爬虫類倶楽部」という中野にある爬虫類の専門店
社員として勤め始めました。哺乳類担当として、猿などを売っていました。

AntRoomは20歳から始めてますね。
最初はほとんど趣味で、副業みたいにやっていました。

 

 

 

 

 

アリへの目覚め

ーーもともと生き物好きだったと思いますが、アリに目覚めたのはいつですか?

15歳くらいのときですね。
ペットショップで働いてる頃に頻繁に山に行くようになりました。
山でムネアカオオアリの女王アリをたまたま拾いました。クロオオアリにそっくりなアリです。

それを持って帰って飼育してたら、卵を産んで、一生懸命卵をなめて掃除したりして、それが幼虫になる。
えさをもらった幼虫は2ヶ月後に働きアリになって、家族で協力して生きていく。
その姿を見て、「なんておもしろいんだろう!」と思って。

それまでにかなり色んな生き物を飼育したんですが、
今まで見たことない仲間同士で協力して生きていく姿に感動したんです。
はまり始めて、徐々にアリが増えていきました。

 

「何でも持ってきていいよ」って言われて。

小さいころか生き物ばっかりです。
物心ついたときから虫ばかり探してて、目黒は比較的虫が少ない場所なんですけど、
人の家の庭に入ってダンゴムシ探したりと、少ないなかでも探してました。

ーーご両親の影響でしょうか?

島田:両親は生き物をそんな好きでもなくて。
ただ、僕が持って帰ってきた生き物は「そんなの持ってくるんじゃない」って言われたことも1回もなかったです。

家に持って帰れば虫かごを買ってくれて、学校に行って世話できないときとかも、
親が代わりにやってくれたりと協力はしてくれてました。

小学校5〜6年生のときに、僕が生き物を好きなことを知ってた担任の先生に「何でも持って来ていいよ」って言われて。
山で捕ってきたトカゲとかカエルとか、ヘビもいました。
うちの教室は動物園みたいな感じで、窓側の机の上に虫かごが、並んでて、もうすごかったですね。笑
ーークラスメイトは何て言ってたんですか?

別に何も言わなかったですね
うちのクラスはそれが当たり前になってましたから・・・
ヘビがいても別にキャーキャー言う友達もいなかったし・・・

お道具箱の中にもカメを飼ってて、引き出し開けるといる。笑

中学・高校のときも、あんまり勉強した記憶はなくて、授業中にずっと虫の本ばっかり読んでました。

「特にコウモリも好きなんですが、高校生の頃は毎日コウモリの本を学校で読んでいました」

 

 

 

 

 

 

 

ーー生き物全般以外にちょっとでも興味を持ったものってないんですか?

ないですね〜。

 

Ant Roomのはじまり

「すごく面白いね。展覧会で置いてみない?」

 

ーーAntRoomを立ち上げたきっかけは何ですか?

一番最初は、「爬虫類倶楽部」のバイトをしていたんですが、
一時期休んで、他のペットショップや東急ハンズ、上野動物園でアルバイトをしていました。

東急ハンズで一緒に働いていた先輩が、自分の絵を洋服屋さんやカフェに飾っている人だったんです。
そのとき僕は、簡単な石膏でアリの巣を作っていました。

それを先輩に見せたら、
「すごく面白いね。今度展覧会やるから置いてみない?」って誘われて。そこで初めて人前にアリの巣を出したんですよ。
女王アリや巣の中でのアリの生活を見たことが無い人がほとんどなので、お客さんに驚かれました。

やっぱりアリの世界って面白いんだな」って思い始めたんです。

それをきっかけに、友達に簡単なホームページを作ってもらい、
ペットショップで働く傍ら、アリの販売を始めました。

ーーアリはどう仕入れているんですか?

週に一回、近場の山に行って、穴を掘って採ってますね。
女王アリを採るのが難しいんですけど、いないと長く飼育ができないので、探します。

ーーペットショップを傍らでやっていて、「アリだけで食べていけるな」と思ったのはいつからですか?

3年前からアリだけですね。それまでは「爬虫類倶楽部」でのアルバイトを再開し、副業としてやっていました。

 

日本だけで月に100〜150件の発送

「アリって意外と、受け入れやすい形をしています」

 

ーー毎月どれくらいの注文がありますか?

日本だけで、月に100~150件の発送がありますね。
北海道から沖縄まで、全国に送ってます。リピーターの方も、新規の方もいますね。
夏の時期は新規のお客さんが多くて、自由研究に使う方もいます。
そこから、種類を増やしていく方も多いです。

 ーーアリの需要、予想よりはるかに多いです。お客さんの男女比に、違いはありますか?

8割が男性で2割が女性です。アリを飼われている方は、虫好きじゃない方が多いんですよ。
今まで生き物を飼ったことが無い人も多いですね。

アリって一番身近な虫の一つで、意外と受け入れやすい形をしています。
アリが家族で暮らしている様子を説明すると、愛情が芽生える人が多いですね。

 ーーご自分で、なんで生き物が好きなのか理由を考えたことはありますか?

ないですね。生まれた時から生き物が好きなので。虫が好きなのが当たり前で。
目黒の同級生も、大人になるにつれて虫から離れていきましたが、虫への興味を失ってしまう方が不思議です。

 ーーじゃあこの職業を選んだのはごく自然な流れだったんですね。

そうですね。ペットショップも楽しかったんですけど、
好きなことばかりはできないじゃないですか。
今は完全に自分の好きなようにできるので、生活できるようになったら、
仕事はすぐに辞めちゃいましたね。

ーーお勤めをしているときや、独立してからでも、何か仕事に対して迷いが生じたことはありますか?

独立したときは、自分一人ではなく妻がいたので、安定した収入を捨てて自営になることに不安はありました。
何もかも自分で考え、決め、行動しないといけないというのは、
雇われている時には感じたことのない不安というのがあります。

その逆に、「何もかも自由にできる」という、雇われていては絶対に感じることのできない自由や喜びがあります。
自分の性格には、誰かに雇われるよりも、今のような自由なスタイルが合っています。

 ーーつらいことはありますか?

ないですね。

 ーーそうなんですか!そんなことってあるんですね。

 

 

 

 

 

アリの採集は一日山を歩くので疲れますが、楽しいので、辛いことやストレスは一切ないですね。

 ーー動物を好きになりすぎて、人間を嫌いになることはなかったですか?

それはなかったですね。

ーーご家族の方はアリを好きなことを何ておっしゃってますか?

「がんばってね」と応援してくれますね。
妻は虫が苦手なんですけど。妻は中学の同級生なんですよ。
僕は中学生のときもタランチュラやサソリを学校に持って行っていたんですよ。
なので、僕が虫を好きなことは昔から知っていて。特に不思議には思っていないですね。

子供は10ヶ月の男の子です。
歩けるようになったら、近所の公園に虫を探しに行きたいなと思ってるんです。

 

アリって、儲かりますか?

 

ーーその、アリって儲かりますか?

アリは、まぁ、生活はできてますね。
結構外国に行ったりするのも、お金かかります。

沖縄にも毎月行くので、旅費はかかりますけど、その分いっぱい採ってくればいいので。

ドイツだとアリがペットとして人気で、アリの専門店もたくさんあるんですよ。
日本には今のところないんですけど。
ドイツは、爬虫類を飼育している人も多いですね。
生き物の飼育に本格的に取り組んでいる人は日本より圧倒的に多いです。

ーーなぜドイツで人気なんですか?

寒い国なので、もともと生き物が少ないんです。
爬虫類でも虫でもそうなんですけど。
だからこそ、昔から、輸入した外国の生き物に力を入れて育てているんですよね。ドイツの人は、面白いんですよ。

 

引越しは働きアリが提案

 

ーー島田さんとアリの生き方の共通点はありますか?

家族や仲間と協力して生きているところですね。それがアリの一番の魅力ですね。
もちろん働きアリは女王アリのこと大事にしてるんですけど、
女王アリに仕えている雰囲気は全くないんですよ。
どちらかというと、働きアリが中心になって作っている家族だと感じますね。

大きい巣になった後は、女王アリはただ卵を生み続けている存在であって、それを世話するのは働きアリですし。
働きアリは色んな仕事をしています。
幼虫を育てるえさの量で、将来幼虫を兵隊アリにするのか、働きアリにするのかを決めること。
新居を見つけたときに「引っ越そう」と言い始めるのも働きアリです。

ーーなぜ働きアリが「新居に引っ越そう」と言うことが、分かるんでしょうか?

新居を見つけると、働きアリが巣に戻って、仲間達に知らせるんですよ。
細かい複雑な動きで伝えているんですけど、触覚で相手を叩いて口を引っ張るんですよ。

そして「後、ついてこいよ」という感じで口を動かすんです。

そのことで、引っ張られたアリが付いて行って、新居に移動します。
それでも引っ越しが始まらない場合は、口をくわえて、相手の体を持ち上げて、新居に運んでいきますね。

 ーー強制的に・・

女王アリも、最後にずるずると引きずられて新居に運ばれていきますね。
なので、女王アリが中心にいるようには見えるんですけど、
働きアリも自分たちで考えて行動していますね。

どういう人がアリを飼うの?

ーー島田さんは、アリの社会を見るのが好きなんですね。アリ社会と人間社会を比較して、思うことはありますか?

世の中で子供を虐待する親がいるじゃないですか。
アリの方がよっぽど子育てが上手だなって思いますね。
巣の中でも一見、幼虫が山積みされているようですが、ちゃんと下の方にいる幼虫にもえさをあげている
世話が行き届いてるんですよね。
人間が地球上に現れるよりも、ずっと前から社会生活をして、仲間同士で生きている。

 ーーアリを飼われる方は癒しを求めて飼う方が多いのですか?

そうですね。アリはマンションでも場所を取らずに飼えるし、臭いもない。
世話もそんなに大変でないので、都会の人には飼いやすい生き物なんだと思いますね。
なかなか都会で生き物を飼うのは大変ですからね。

 ーーアリを飼えなくなった人が返品することはありますか?

ほとんどいないですね。
アリは飼い主が手をかけると、どんどん育ってくれます。その反面、手をかけないと一気に数が減っちゃうんですよ。
日本の種類も地域ごとに遺伝子の違いがあって、同じ種類でも別の地域に放してしまうと、
違う遺伝子が混ざってしまうので、問題になっていますね。

ーーアリを買ってくれるお客さんの傾向はありますか?

趣味で飼っている大人が大半なんですけど、真面目に毎日仕事もしている人が多いですね。
虫マニアの人は少ないです。夏休みの自由研究で飼うお子さんもいますが、全体的にはすごく少ないですね。
イベントの常連さんは20代から60代が多いですね。年輩の方で、退職されてからアリにはまった方も多いです。

 

島田さんは「ジャパンレプタイルズショー」などのイベントに出展されている。
このショーはマニアックな動物の展示イベントだ。
ダンゴムシやフクロウ、トカゲなどの珍しい動物が、愛好家によりブース別に展示されている。

 

ハリアリ、かなり人気です

 

ーーお客さんは「蟻マシーン」をいくつ持っている方が多いですか?

 

何個も持っている方が多いですね。常連さんでクロオオアリを飼っている方がいるんですけど、

この「蟻マシーン3号」を4台チューブで連結して飼っています
その人はすごい大事にしてますね。働きアリの数が2000匹くらいまでに増えてます。

最初はクロオオアリから買い始めて、最終的に、このハリアリに興味を持ってくれる方がすごく多い。
アリ好きの中ではかなり人気なんですよ。
この原始的な感じと、この狩りをするところが面白いんだと思います。

一匹のハリアリが、もう一匹を壁から降ろそうと、足を顎で引っ張っている。

 ーーまだケンカしてますね。

南米のアリは特に原始的ですね。
南米には今年初めて行ったんですけど、東南アジアは年に2回行ってます。
ボルネオとか、マレーシアとかインドネシアにもちょこちょこ行きますね。

 

ーーアリがメインですか?

はい。アリを採るだけではなくて、アリの研究者に同行することもありますね。
大体研究者の人達と海外に行って、そこに住んでいるアリとかも調査してますね。

 ーー研究者の方と行くと、より面白そうですね。

そうですね。個人だと入れない保護区にも入れて、許可を取れば採集ができるんですよ。
僕はそこで自由にアリを採って、その後研究者の人にサンプルとして渡すんです。
研究者にとっても、僕にとっても、いいことがありますね。
写真を撮ることが目的なので、採ったアリを日本に持って帰ることはあまりないです。

 

ーー島田さんが特に愛着のあるアリはいますか?

ここには50種類のアリがいますが、クロオオアリですね。家に4、5年いるので、愛着は湧きますね。
全然珍しい種類ではないんですけど。

アリ家族観察

アリまかせにしています

 

(蟻マシーン3号の中にいるアリ家族を観察)

巣の中のゴミも、全部えさ場に運び出します。えさ場見ると、一番奥に、かすみたいのが山になってますよね。

あれも全部、アリが巣の中から運び出したゴミです。
なので巣の中のそうじはすべてアリまかせにしてますね。

ーーアリまかせ・・・

ゴミはちゃんと外に運び出すんです。

ーー今アリにあげているのは、島田さんが開発したえさですか?

 

そうです。アリ専用の粉末のえさです。蜜の味がするえさで、水でといてあげます。ほとんどこれで飼育できます。

ーーあ、今女王アリがここにいますね。

働きアリに囲まれていてわかりづらいんですけど、一番奥に一匹だけ大きいのがいます。
常にたくさんの働きアリが、女王アリを守るために囲んでいます。

この巣の全部の働きアリは、この1匹の女王アリから生まれた娘たちです。
女王アリはだいたい10年から20年の寿命があって、その間ずっと卵を産んで増えていきます。

部屋も使い分けをしています。
この白いツヤツヤしたのが幼虫なんですけど、ここが幼虫置き場、
ここは繭置き場になってて、ここは卵置き場なんですよ。
こんな感じで成長の段階ごとによって置き場所をかえていくんですよね。繭になると、繭部屋に働きアリが運んできます。

(つづく)

 前半 後半

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